とらひこ先生


2 黒い犬

木を切る オイ、ひっ公、こりゃあなんのぬたくりでエ

バカヤロー、ジイサンが木を切ってるじゃあねえか

オメエのじいさんか?

オオヨ、俺のジイさんだヨ

包丁で切ってんのか? 

ウルセー!

デ、おめー、こんな犬飼ってたかー?

オオヨ、俺もいまいち記憶がうすいなあ

髪の毛と同じだ


   朝から、悪ダチのツグジが来て、しばらくうるさいことをほざいていたが、小銭握りしめて場外車券を買いに行った。

   オケラになりやがれ!

   古い写真を見ながら、ぬたくっているがこの犬の記憶がすっかり抜けていた。
柴犬程の大きさで、目の上だけに茶の眉班があり、あとは真っ黒け・・・。
昔はけっこう何処にでもいた雑種の犬だった。

少しずつ思い出してきた。
この時は、「オイ、ジイサン写真うつすぞ」と言ったら、ジイサンは手を止め半分こっちを向いたところだ。
それまでジイサンの足元でだらけて寝そべって いたこいつが、ムクッと立ち上がりポーズを決めた。
そうそう名前は、「クロ」だった。
   近頃、こんな真っ黒けの雑種犬がいなくなったなあ・・・


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