とらひこ先生


18 人形谷 (十市土人形)

南国市十市人形谷は、遠い時間の風がそよぐような場所です。
それほど何度も行ったことはないけれど、何故か夢にみます。
夢の中で人形谷へ行くときは、
決まってデコボコの急な坂道をブレーキの壊れた旧い車に乗って下っています。
もどかしい不安な気持ちといっしょに懐かしい心地よさに包まれながら・・・。
人形谷を、土地の人はデコ谷と呼びます。
明治のはじめまで土人形を作っていた場所で、
それは十市土人形と呼ばれていました。
壊れやすい土人形の為、今に残るモノは少なく、
それを作っていた昔の人たちのことは、
今はもう誰も知りません。

この里には「女軆(にょたい)神社」という古い神社があります。
水や雨に関係深い神さまと言われていますが、
詳しい由来はわかりません。
1000年前、2000年前、あるいはもっと昔、
この谷に人々が暮らしはじめたその時から、共にあるような気がします。
この神社のすぐ近くには、佳い水の泉む共同井戸があると聞きました。



                    


ある日曜日、
人形谷のD,Zさんの家に一体だけ土人形が残っていると聞き、訪ねました。
近所のMさんも家に残る土人形を持って来てくれました。
また、D,Tさんからは、本当に興味深いお話をお聞きしました。
3人とも、子供の時に存分に野山を駆け回った人で、
「あそこで、人形の欠片を掘った」「あの谷に型がある」「粘土は、あの場所から出る」
と楽しそうに話してくれました。

元野生児でおっとこ前の人形谷の3人衆、ありがとうございました。


D,Zさんの家に残る土人形 約30cm(H)

D,Zさんの家には、人形の型が何対か残っています。
何年か前、家の改築工事のとき、
土の中からたくさんの人形の型が出てきたそうです。
いまもそれは、敷地の下に埋まっているそうです。
Mさんの家に残る土人形 約40cm(H)

ジイサンかヒジイサンかあるいはもっと前の人の
節句人形ではないだろうか?と言っていました。
同上 約50cm(H)


D,Zさんの家にある人形の型


「オカマの曲がり」
と呼ばれている場所。

ここに人形を焼いた窯があったと伝えられています。
向こうの林の元辺りに粘土の出るところがあるそうです。

サテサテ、人形谷のご一統様、わずかに残るお人形さん達を
お宮の広場かどこぞの原っぱに持ち寄りまして、
野外のギャラリーで展覧会は、如何なものでござりましょう・・・
日も暮れて、提灯灯れば、なおオシャレでござ候。



トップへ