犬も歩けば

  20 ロバート・ブレイク



「グラインド・イン・ブルー」の中で白バイ警官のロバート・ブレイクは、
撃たれてハイウェイの真ん中に倒れた。

ロバート・ブレイクは若い頃に連んだKにほんとうによく似ている。
「俺達に明日はない」のチンピラアンチャン役のマイケル・J・ポラードも好きだなあ。
そっくりではないが、ちょっとツグジに似たとこがある。
「スケアクロウ」のアル・パチーノ、ジーン・ハックマン。
アル・パチーノは早く逝ったSちゃんに似ている。
Sちゃんは酒とバクチがすきだった。
「カッコウの巣の上で」のマクマーフィー(ジャック・ニコルスン)とチーフ(ウィル・サンプス)。
「真夜中のカーボーイ」「イージー・ライダー」「夕陽に向かって走れ」
「狼たちの午後」「コールガール」「ペーパー・ムーン」・・・。

あの頃、こころやさしきオチコボレ達の映画がたくさんあった。



東へ向かう海沿いの国道脇に喫茶店がある。
たいしてシャレた建物でもなく、コーヒーだって取り立てて旨くはない。
ただ、窓から溢れる一面の海の眺めがある。
その店の本棚の隅に「アメリカン・ニューシネマ‘60〜‘70」
1988年発行の別冊太陽(平凡社)という古ぼけたグラビア誌がある。
フェイ・ダナウェイとウォーレン・ビーチィがピストルを手に、
車に寄りかかっている写真が表紙になっている。

煙草を燻らし、ちらりと海を眺め、この本のページをめくるのが心地よくたのしい。
その本の中で川本三郎さんは「ニューシネマはどこへ行った」と題して
『ニューシネマとはひとことでいえば“傷ついた者達の映画”である。
あるいはもう少し正確にいえば“夢見ようとして挫折していった者たちの映画”である。』
と書いている。
『ボブ・ヂィランの“マイ・バック・ページ”の歌詞、ーいまの僕はあのころよりずっと若いーを
口ずさみながら俺達の映画の時代の熱気を振り返ってみよう』とも書いている。

「グラインド・イン・ブルー」の中で白バイ警官のロバート・ブレイクは、
撃たれてハイウェイの真ん中に倒れた。

“マイ・バック・ページ”の歌詞なんて知らないけど、
オレはあのころといっしょで、ずーとオチコボレたままだよ、そしてこれからも・・・




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