1 小松先生
小松先生はコーヒーが好きで、大きな声で話し、いつ
も晴れ晴れとした顔で堂々と歩く小柄なおばあさんだっ
た。晩年は膝が悪く、小さな平屋の借家からあまり出
ることもなくなった。いわゆるタユーさんをなりわいとして
困った人の相談をうけていたが、金銭に執着の全くない
人で殆ど謝礼も受け取らなかったようだ。
小松先生が80歳で亡くなって2年がすぎた。
後に知ったが、小松先生は薬師寺で得度を受けた坊
さんでもあり、葬式は奈良の本山から2人の坊さんが、
遠く高知のはずれまで足を運ばれ、ごく質素に永く暮らし
た借家で行われた。ふしぎだったのは読経の間に多く
の鳥たちが集まり、そこらの屋根、電線にとまっていたこ
とだ。渡って来たばかりのジョウビタキもそこにいた。