犬も歩けば            

19 紅みかん

おっかさんが産まれ育った山里の家の庭に

紅みかんの木とうすかわみかんの木があった。

懐かしい香りがいっぱいのあの小さな紅みかんを

夢のように甘かったあの小さなうすかわみかんを

もう一度喰いたいと思っていた。

紅みかん(小紅みかん)

〜昔、中国福州の商人が台風に遭い
安芸郡羽根村(現、室戸市羽根)に漂着し、
その種をもたらしたという伝説がある。〜
と、田中諭一郎博士が
「日本柑橘図譜」養賢堂S21年刊に
著述されています。
うすかわ(柑子みかん)

〜中国には、この種のみかんはなく在来柑橘であることは
ほぼ確実であり、日本産の果実中これに最も近いのは
橘(たちばな)なるを以て、本種はタチバナの変成種だろう。〜
と同じく上記本に田中博士は記述されています。

「延喜式」、「続日本記」にも「柑子」の記述があるそうです。


たちばな(野生のみかん)

土佐には、何ヶ所かタチバナの自生地があります。
これは南国市の山中にあるタチバナの古木です。
12月の始めの写真ですが、まだ青い実もありました。
実はピンポン玉ほどの大きさです。

昔の人達がタチバナの「枝変わり」のより大きなより甘い実を選び、
永い時をかけて大切にはぐくんできた品種の「うすかわ」が、
今、絶えようとしています。

また、「紅みかん」の木も山里にわずかに残るだけになったとききます。



        注:「紅みかん」「うすかわ」は、高知での通称、方言的な言い回しです。
          高知の紅みかんは正式名称「小紅みかん」と呼ばれ、日本各地にある温州みかん系の紅みかんとは別の系統です。



        念願だった貴重な「紅みかん」と「うすかわ」をたくさんいただいた山里の方と
        柑橘のことをやさしく親切に教えて頂いた「高知県農業技術センター果樹試験場」の田中満稔様に、こころよりお礼申します。





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