犬も歩けば


16 トッコウの峯




トッコウの峯は海の中
10何年前 たまたま船を止めて
竿を出したあの場所が
トッコウの峯の真上だったのでは・・・





「十市の金比羅」さんと呼ばれ、海の人の信仰厚い古い神社があります。
その神社の由来書に、
「元の宮は海に没した黒田郡の黒崎の宮であり、また讃岐の金比羅さんの発祥の神社である。」
と記されています。

十市の金比羅さんは、海辺の小高い山上にあり、
山頂は平らな広場になっていて、
そこから南を眺めると、
すべて海です。

コンピラ神ははるか昔の印度渡来の水の神、海の神とも言われています。




土佐国黒田ト言ハ、是ヨリ南ニ有リ。
此ノ地ヨリ七里バカリ沖ニ
トッコウノ峯トテ、東西大河ヨリ流出ル川裾 長埜、常磐両村ノ間ニ有リ。
此所ニ黒崎ノ宮トテ五穀御祭ノ御宮ナリ。
有ル時 日数三十日大雨フリ、東西ノ河々ヨリ洪水出。黒田大埜大海ノ如クナリ、
其ノ翌日、大地震シテ、終ニ南海トナル。

                                皆山集(幕末から明治初年にかけてまとめられた郷土史料集)
人定〔夜の8時頃〕にいたりて、大きに地震る・・・・
土佐国の田苑(たはたけ)五十余萬頃(いそよろづしろあまり)、没れて海と為る。
古老(おいひと)の曰く、「是の如く地動ること、未だ嘗(むかし)より有らず。」

                     日本書紀 天武十三年十月(白鳳の大地震の記述)





海に沈んだ時間(とき)の痕跡はかすかで、
沖に出る人々が、ひっそりと語り継ぐばかりです。


ぼんやりとした感覚ですが、
トッコウの峯という言葉には、
遙か遠い縄文の時間を内包したような懐かしさを感じます。




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